越前和紙を使ったパンフレットが登場

福井の地方銀行では、このほど、保険会社らと連携して、国の伝統的工芸品の和紙を使ったパンフレットを作成したそうです。

もし、もらったパンフレットが和紙でつくられたものと聞くと、どのように感じるでしょうか? 一般的なパンフレットよりも、大事にしたいという気持ちが強くなったり、紙の質感やにおい、めくった時の音などが気になったりするかもしれません。

そこで今回は、越前和紙を使ったパンフレットについてご紹介します。

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越前和紙は、福井県越前市とその周辺地域で生産される和紙です。

全国に数ある和紙の中でも、越前和紙の歴史は古く、奈良時代の文献には、越前において、仏教の経典を写すための写経用の紙が漉(す)かれていたとの記録が残っています。

越前和紙は、コウゾ(楮)、ミツマタ(三椏)、ガンピ(雁皮)、麻などの強い繊維をはじめ、木材パルプ繊維をうまく調和させ、からみ合わせて生まれる、丈夫で美しさのなかに素朴な味のある紙です。

その製品は、他の産地に類を見ないものであり、用途に応じた多種多様の和紙がつくられています。中でも、「奉書紙(ほうしょし・ほうしょがみ)」は、中世には、上質紙として高貴な人たちの公文書に使用されていました。上品でふっくらとした紙肌と、優美で洗練された風合いであり、特に、越前で製造されたものは、他の産地のものと区別され、重宝されました。奉書紙はまた、版画用紙としても国内外で評価が高く、あのピカソが愛用していたという話もあります。

また、「鳥の子紙(とりのこし・とのこし)」は、紙の色が鶏卵に似ていることから、このように呼ばれるようになり、越前が主な産地です。触り心地は滑らかで、耐久性に優れ、虫害も少ないことから、写経や公文書用紙などとして愛用されてきました。室町時代には、「越前鳥の子」の名で有名になり、この紙について、江戸時代の文献には、「紙王」(紙の王者)と記されています。なお、「越前鳥の子紙」は、2017年10月に、国の重要無形文化財に指定されました。

1976年に、越前和紙は、国の伝統的工芸品に指定されています。また、2008年には、特許庁の地域団体商標に登録されています。

パンフレットを通じて越前和紙を身近に感じてほしい

1000年を超える和紙づくりの伝統は、現在も受け継がれ、越前特有の伝統技法を生かした手すきの紙と、時代感覚に合わせた機械すきの紙とがあり、それぞれの紙づくりにおいて、たゆまぬ努力を続けています。また、新しい技法も積極的に取り入れ、これに独創的な工夫を加えるなどして、世界にその名声を高めています。

しかし、越前和紙を取り巻く状況は、年々厳しくなっています。他の産地との競争があるほか、担い手の職人が減り、出荷量も低下しています。福井県和紙工業協同組合の石川浩理事長によれば、「越前和紙は、敷居が高いイメージが強い。パンフレットを通して和紙を身近に感じてもらい、地元福井の人にも魅力を伝えたい」とのことです(2018年4月21日付け福井新聞)。

日本には、多種多様な名産品や地域ブランド品が存在します。長い歴史を経て、細々と存在しているものも数々あります。こうした産品の産地は、売上げ減少や後継者不足などの深刻な問題を抱えていることも少なくありません。

パンフレットの素材に名産品を使用することが、地域産業の発展につながるといいですね。

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