越前和紙を使ったパンフレットが登場

福井の地方銀行では、このほど、保険会社らと連携して、国の伝統的工芸品の和紙を使ったパンフレットを作成したそうです。

もし、もらったパンフレットが和紙でつくられたものと聞くと、どのように感じるでしょうか? 一般的なパンフレットよりも、大事にしたいという気持ちが強くなったり、紙の質感やにおい、めくった時の音などが気になったりするかもしれません。

そこで今回は、越前和紙を使ったパンフレットについてご紹介します。

損保業界初の取組み。越前和紙を使用した火災保険パンフレットの提供を開始

福井銀行は、損害保険大手である損保ジャパン日本興亜の福井支店、福井県和紙工業協同組合とともに、越前和紙を使った火災保険のパンフレットを作成しました。

パンフレットは、A4サイズで、全28ページが和紙から出来ており、表紙には、紙すき作業の様子を伝える写真を採用しています。今年5月から、福井銀行の各支店などで1,300部配布され、同銀行で扱う損保ジャパン日本興亜の火災保険の内容などが掲載されています。住宅ローンや火災保険を検討する人に提供しています。

福井銀行と損保ジャパン日本興亜は、2017年11月に、「地域創生に係る包括的業務連携に関する協定」を結んでいます。今回、具体的な取組みとして、高い品質を誇る越前和紙を発信し、ブランド力を向上させようと、パンフレットに越前和紙を採用したそうです。損保業界でパンフレットに地場産和紙を使う例は、初めてのことです。

なお、パンフレットは、配布に先立ち、「越前和紙」の起源であり、世界で唯一の、紙の神を祭った岡太(おかもと)神社・大瀧神社(福井県越前市)において、家内安全の祈祷(きとう)を受けています。このため、お客さまには、「祈祷済みパンフレット」として提供されます。

越前和紙とは?

越前和紙は、福井県越前市とその周辺地域で生産される和紙です。

全国に数ある和紙の中でも、越前和紙の歴史は古く、奈良時代の文献には、越前において、仏教の経典を写すための写経用の紙が漉(す)かれていたとの記録が残っています。

越前和紙は、コウゾ(楮)、ミツマタ(三椏)、ガンピ(雁皮)、麻などの強い繊維をはじめ、木材パルプ繊維をうまく調和させ、からみ合わせて生まれる、丈夫で美しさのなかに素朴な味のある紙です。

その製品は、他の産地に類を見ないものであり、用途に応じた多種多様の和紙がつくられています。中でも、「奉書紙(ほうしょし・ほうしょがみ)」は、中世には、上質紙として高貴な人たちの公文書に使用されていました。上品でふっくらとした紙肌と、優美で洗練された風合いであり、特に、越前で製造されたものは、他の産地のものと区別され、重宝されました。奉書紙はまた、版画用紙としても国内外で評価が高く、あのピカソが愛用していたという話もあります。

また、「鳥の子紙(とりのこし・とのこし)」は、紙の色が鶏卵に似ていることから、このように呼ばれるようになり、越前が主な産地です。触り心地は滑らかで、耐久性に優れ、虫害も少ないことから、写経や公文書用紙などとして愛用されてきました。室町時代には、「越前鳥の子」の名で有名になり、この紙について、江戸時代の文献には、「紙王」(紙の王者)と記されています。なお、「越前鳥の子紙」は、2017年10月に、国の重要無形文化財に指定されました。

1976年に、越前和紙は、国の伝統的工芸品に指定されています。また、2008年には、特許庁の地域団体商標に登録されています。

パンフレットを通じて越前和紙を身近に感じてほしい

1000年を超える和紙づくりの伝統は、現在も受け継がれ、越前特有の伝統技法を生かした手すきの紙と、時代感覚に合わせた機械すきの紙とがあり、それぞれの紙づくりにおいて、たゆまぬ努力を続けています。また、新しい技法も積極的に取り入れ、これに独創的な工夫を加えるなどして、世界にその名声を高めています。

しかし、越前和紙を取り巻く状況は、年々厳しくなっています。他の産地との競争があるほか、担い手の職人が減り、出荷量も低下しています。福井県和紙工業協同組合の石川浩理事長によれば、「越前和紙は、敷居が高いイメージが強い。パンフレットを通して和紙を身近に感じてもらい、地元福井の人にも魅力を伝えたい」とのことです(2018年4月21日付け福井新聞)。

日本には、多種多様な名産品や地域ブランド品が存在します。長い歴史を経て、細々と存在しているものも数々あります。こうした産品の産地は、売上げ減少や後継者不足などの深刻な問題を抱えていることも少なくありません。

パンフレットの素材に名産品を使用することが、地域産業の発展につながるといいですね。