パンフレットの工夫

パンフレット作成に必要な「マーケットイン」の発想

日本各地には、いわゆる「B級グルメ」があふれています。しかし、世間に浸透し、定着しているものはほんの一握りにすぎません。その理由の一つには、わざわざ食べにいくまでもない程度のものが多いことが挙げられます。
横並び意識で、近隣の地域と似たようなことをしても、消費者がそれを求めていなければ、作り手からの一方的な押し売りです。やがて消滅する運命をたどることでしょう。

パンフレットでも同じことがいえます。やみくもにパンフレットを作っても、消費者のニーズに合った内容でなければ、長くは保管されず、ゴミ箱行きになりかねません。そうなると、消費者が次の行動を起こす可能性が絶たれてしまいます。

マーケティングの世界では、近年、消費者のニーズを満たす商品・サービスを提供していくという「マーケットイン」の考え方が重視されています。

今回は、パンフレット作成にマーケットインの発想を取り入れることの重要性について、「八王子まちゼミ」を事例として取り上げ、ご紹介します。

お店の人が講師。専門的な知識やコツを無料で学べる「八王子まちゼミ」

東京・八王子市では、八王子駅周辺のお店を中心に、2018年10月1日から31日にかけて、「八王子まちゼミ」が行われます。

「まちゼミ」とは、お店の店主やスタッフが講師となって、専門的な知識や情報、コツを無料で教えるゼミナール(演習型イベント)のこと。「得するまちのゼミナール」の略だそうです。
まちゼミは、全国規模で展開されており、八王子では2014年からスタートし、今回で10回目の開催となります。
日頃の接客の延長として店内で講座を開くのが特徴で、今回は過去最多となる56店が参加。「ハンバーグでお子様を喜ばそう!」「肌に合わせたスキンケアの選び方」「キレイと健康は良い眠りから」など、66の講座が開かれます。

どのような受講者を対象にするか。講座の内容を吟味

八王子まちゼミの参加店にとって一番の悩みは、自分の講座に受講者を呼べるのか、ということでした。

こうした悩みを解消すべく、八王子まちゼミを運営する実行委員会では、ワークショップを開いて、各店の講座の内容を吟味しています。
各店はまず、「まちゼミ講座作成カルテ」に、計画する講座の内容を書き出します。これを、グループに分かれた数人のメンバーで話し合います。

ワークショップでは、講座のタイトルや構成、開催時間や定員、説明の仕方などについて、意見を交換していきます。このとき、どのような受講者を対象にするかを特に意識したといいます。
例えば、ある男性店主は、「女性に対して、理屈っぽい説明は駄目。きれいになるなどの分かりやすい言葉を使わないといけない」など、表現方法について何度も駄目出しをされたそうです。何と手厳しいことか…。でも、参加店の間で互いに高め合う関係が構築できているからこそ、本音が言えるのです。
ワークショップを通じて、店主たちは、どうすれば講座が魅力的になるのかを理解していきます。

そもそも、このようなワークショップを実施するのも、店主が講座で何をしたいのかを整理しつつ、受講者が何を求めているのかといった「マーケットイン」の考え方を取り入れることが目的でした。そして、その発想をまちゼミで実践してこそ、意味があったのです。

パンフレットのデザインを一新。受講者層に変化が

上述したマーケットインの発想は、パンフレットの作成にも生かされています。

第3回から、実行委員会では、ゼミに特に来てほしい対象者として30~40代の女性を想定し、パンフレットのデザインを一新。表紙は女性誌を思わせる、洗練されたパンフレットに変身しました。

また、ラックに置いても折れ曲がらないように紙を厚くしました。さらに、買い物客などが手軽に持ち帰ることができるように、サイズをひと回り小さくしました。各家庭でも長く保管され、家族全員の目に留まるようなパンフレットを目指しました。

パンフレットは、ゼミ参加店はもちろんのこと、人が集まりやすい駅前のショッピングセンターや八王子市内のスーパーにも置いてもらうことにしました。

その結果、おしゃれでコンパクトなパンフレットは、違和感なく手に取られ、狙いどおり、30~40代の女性の受講者が増えました。そして、全体的な受講者の数も増えました。

パンフレットのデザインをリニューアルしたことで、まちゼミに一つの転機が訪れたのでした。

パンフレット作成にもマーケットインの発想が大事

「作ったものを並べて売る」という「プロダクトアウト」とともに、今では、消費者のニーズをとことん考えて、商品やサービスを提供していくという「マーケットイン」の発想も重要になっています。

パンフレットの作成に関しても、マーケットインの発想を意識することが必要です。これは、八王子まちゼミの事例でも証明されています。また、過去のコラム「就活生が振り向く会社案内パンフレット作成のポイント」(URL: https://100pamphlet.jp/lab/lab-howto/2901/)でも、会社案内の作成において、「企業の都合ではなく、学生の目線に立って、学生が親しみやすいような表現やレイアウトなどとする工夫が必要」とご紹介したとおりです。

誰に読んでほしいのか、消費者が知りたい情報は何かなど、顧客の視点に立って、パンフレットのデザインや構成、文言などを考えていくことが、パンフレット作成のポイントの一つとなるでしょう。

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