紙媒体の良さが見直されてきている ~アメリカの事例から~

アメリカでは、eコマース(EC)の成長やスマートフォンの普及により、紙媒体は、一時は時代遅れのものと認識されていました。

しかし、近年、紙媒体は、再び盛り返してきています。それは、どうしてなのでしょうか。
今回は、アメリカの事例を基に、その“謎”に迫りたいと思います。

よみがえる紙のカタログ。アメリカでは2013年から一転増加へ

アメリカ商務省(United States Department of Commerce)の資料によると、アメリカでは、1人当たりの商業印刷出荷額が、1990年代をピークとして徐々に減少していき、2007年になるとその傾向が顕著になります。これは、Facebook、Twitter、iPhoneの登場によるものであり、ECやスマートフォンで完結するビジネスモデルの土壌が出来てしまったのです。これにより、商業印刷は一挙に低迷し、カタログやダイレクトメール(DM)市場は、EC市場に飲まれてしまいます。

しかし、アメリカダイレクト・マーケティング協会(Direct Marketing Association)の調査によれば、2013年になって、アメリカのカタログ郵送件数は、2007年以降初めて増加に転じます。その数は、ピーク時(2007年)の60%ほどにすぎませんでしたが、主要小売業の動向を加味すると、復興の兆候を示すものとも考えられました。

こうした状況に対し、アメリカでは、「スマートフォンがあれば完結するはずなのに、今さらどうして紙のカタログが必要なのか」という疑問が沸き起こり、一般紙や雑誌で特集が組まれたほどです。

紙のカタログがなぜ復活したのか?

では、アメリカ各紙・各誌は、紙のカタログが復活した原因をどのように考えていたのでしょうか?

ニューヨークタイムス(The New York Times)では、カタログが、長年の停滞の後、変革に向けて復活を遂げるとし、その理由を、Webマーケティングの効果測定ができるようになり、顧客の75%が紙のカタログを見てから商品を購入していたことが分かるなど、紙媒体の良さが認識されてきたためとしています。

ウォールストリートジャーナル(The Wall Street Journal)は、オンライン専門通販会社の例として、Webマーケティングで効果測定をした結果、紙のカタログを見ながらWebで注文をする人は、そうでない人の10倍以上も注文金額が多いことが分かった、という内容を紹介しています。

ハーバードビジネスレビュー(Harvard Business Review)では、紙媒体の製作・印刷技術の進歩により、顧客セグメントに応じて、内容を変えて刷り分けることができるようになり、顧客のターゲットに合わせたカタログを届けることが可能になった、としています。また、eメールによるマーケティング、SNSなどの複数の方策を、カタログと連動させて、記憶に残り、価値のあるブランド体験を顧客に提供している、とも報じています。

紙への印刷技術が進化。紙媒体は今後も残る

今回のコラムでは、アメリカの紙媒体の復権に関する事例をご紹介してきましたが、次のようなことが言えそうです。

  • 紙媒体は、印刷技術の進化によって、顧客の視点に立ったバージョニング(versioning;顧客セグメントごとに、内容を一部変えたバージョンの紙媒体を用意すること)、ターゲティング、ワン to ワン(One to One)への対応が、安価で容易に実現できるようになった。
  • 紙媒体は、その高い閲覧性(一覧性)によって、商品を利用したライフスタイルや、顧客が「憧れる」「まねしたい」商品の使い方などを提案できるようになった。
  • これらのことから、紙媒体とWebメディアが連動することにより、Webマーケティングの効果が飛躍的に上がり、ECの売上げが伸びるに至ったと考えられます。

 
アメリカでは、依然として、紙のカタログの需要があり、紙媒体の価値が見直されています。
また、日本でも、DMが改めて注目されるなどしています。日本の事例につきましては、紙幅の関係上、別の機会にご紹介できればと思います。

パンフレットやカタログなどの紙媒体は、ひところは時代遅れのものとされてきましたが、マーケティング上の重要なツールとして、今後も残り、効果を発揮しそうです。